腕が生えました
七尾きよし

指し示す指が
ぶるぶる震える
なんでもない
ただ指をさしておしえるだけのことで
からだはこわばり
震動は腕を通って
指先へと伝っていく

なまのきみに近づいたら
ぼくの妄想の中に生きるきみが
腕を伸ばして
ばこっと
心臓の殻を破って
外へ飛び出した
なまのきみに握手を求めるように

その存在を知らせてと
手のひらがぼくに
合図する
ことばを発せよと
指先をくいくい
合図する
ぼくは血まみれだ

恋の種は
いったん芽吹いてしまうと
手がつけられない
ぼくの胸から突き出たままの
きみの手は
花を咲かすことが
当然のようにぼくを支配する

愛のことばなど
語るつもりがないぼくは
途方にくれる
流れ出る生き血を吸いながら
腕は日に日に
成長している









自由詩 腕が生えました Copyright 七尾きよし 2006-07-12 03:22:22
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