マッドビースト


もういいと
何時からだろう
硬い殻に閉じこもった
わずかの養分と
わずかの水分とを持って
硬く硬く閉ざした

もういいと
放っておいてと
何時からだろう
光に触れないように
空気に触れないように
硬く硬く閉ざした

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 干からびた種を
 掌に載せ
 大事に大事に撫でてもし
 それを
 大地と雨と太陽と時間がそうするように
 言葉を持たない種族の悲しみを癒して
 芽吹かせることができるなら
 それはきっと愛
 街に転がっているような
 薄いピンクに着色されたような
 ポーズやトレンドの一部のような
 安っぽいものではなくて
 この星ができたときに
 岩や熱と一緒に混ぜ込まれた
 一番大事な元素の愛だ

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

もういいと
放っておいてと
閉じこもった種

芽吹けば
きっと知る
世界が色彩に溢れていることを

真っ暗な殻の中から
顔を出して
真っ先にめぐり合った
真っ先に感動したものの色に
染まればいいのに
素早く飛ぶ鳥の青い翼なら菖蒲になって
世界を染めて壮大に沈む太陽ならばハイビスカスになればいいのに

干からびた種を
掌に載せ
大事に大事に撫でてもし
それを
芽吹かせることができたなら
それは愛

僕らは種になって眠る
僕らは種になって眠る
だれかの愛に目覚める季節まで
愛をささげるだれかに巡り合うまで

僕らは種になって眠る
愛に巡り合えば芽吹き 咲き 彩る
世界を彩る
世界は僕らの夢の写像



未詩・独白Copyright マッドビースト 2006-07-10 23:53:07
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