ニュクス\ヒュプノス\タナトス
マッドビースト

青いきらきらした羽毛の
美しい鳥が
朝焼けの中を飛んでいた

光はまだ世界に行き渡っていなくて
冷えた雲が灰色に固まったままオレンジに照らされ
荘厳に渦巻いている空

地上では
カラスが大きなくちばしを器用に使って
ファーストフードの袋を引き裂いている
もうお互いに言葉が分からないのだが
親戚であることは分るようだった


世界はまだ眠っていた
文明は去ったのだ
世界は新しい所有者を探している
人工の建物や道路は
不器用な新しい自然となって名づけられるのを待っている

ファーストフードの袋をやっつけたカラスが
2,3歩跳ねて進んだ
ここは私の領土だと

青い鳥は上空を旋回し
新しい世界を見定めようとしていた



世界はキレイだった
言葉はない
言葉などいらない
表現などいらない
感じるものなどいない
動くものは数少ない役者として
世界の一部を美しく演じた
世界が世界を愛した

空はまだ原始のまま地上に寄り添ってきたようだった






かーーーん
かーーーーん
かーーーーーん






点滅する大きな赤い目玉と
縞模様の長い腕の魔物が叫んだ

続いてあまりに唐突に
まったくこの世界にそぐわない異質さで
カラフルなスチールの列車が世界を引き裂いた






かーーーーーん
かーーーーん
かーーーん
・・・・
・・


世界は終わってしまった
カラスは瞳から知性の色を消しまたごみ山をつつきだした
青い鳥が微かに残った夜を急いで吸い込んでまだ暗い空の方へ飛んでいってしまった
私は背広を着て歩いた

世界は終わってしまった


未詩・独白 ニュクス\ヒュプノス\タナトス Copyright マッドビースト 2006-07-07 23:27:50
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