風時計、雨空を文字盤に
たりぽん(大理 奔)

低い雲が覆い隠す
放牧場のある丘には
みっつの風車が立っている
ぎゅおん、ぎゅおんと
海にむかって唸って
いるはずの刻
かすみのように薄い雲が
まわっている時間を
見えなくしてしまうから
ゴイサギがそれを確かめようと
あちらの木へうつっていくようだ

残り少ないはずの二人の
時針の角度も
雲の向こうでまわっている
気づかないふりで
ぎゅおん、ぎゅおんと
風車の口癖をまねてみる
カラスまでそれを確かめようと
最終処分場のほうへ跳ねるから

雨だね
君が預言のようにつぶやくと
途端に雲が流れ落ちて
夏至の放牧場
湿った夜空
うっすらとまわる
昨日今日明日の
みっつの風車に
思い出す

背中から
風車に巻き取られていく
旧い編み物、それが。




自由詩 風時計、雨空を文字盤に Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-06-27 00:26:38縦
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