青い実落ちた
銀猫

愛しきものに残された
僅かな時間が
手出しを許さず
無表情に過ぎて行く

死の匂いのする
冷ややかな居心地に耐えかねて
虚ろに庭先ばかりを見ている

こんな哀しい歯痒さのなかで
無邪気を装い気にすることは
夕餉のヒレカツの出来だったりする
わたし きみ
明日にまだ目覚める者にだけ日常が許される
そんな
無情の心理に襲われながら
抗いもせず身を任せるしかないのだね


ああ
柿の木の青い実が
ぽとりと落ちた

風は時折つよく枝をしならせ
木の葉がざわめく
こころの森が
嵐を哭く


ああ

ああ落ちた

柿の実青い




自由詩 青い実落ちた Copyright 銀猫 2006-06-26 20:50:31
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