たらら・り・ら
七尾きよし

やさしさを
ことばにするきみ
何層にも積み重なる波打つ海面を高々と
すべてを飲み込んでしまう津波のように
かなしみは世界を覆う
少なくとも
見て感じとることのできるこの空間を
感情は毛穴から抜け出して白く細い筋となって空高く舞い上がり
狙いをつけると
とたんにまっさかさまに
透明な網目をめぐらしてきみの世界をつつみこむ
愛するひとを
憎むべきひとを
ぼくたちは世界にかかえたまま
絶えることのない感情の津波を浴びせあいながら
この地上に生きている

初めてきみを目にしたとき
ぼくが白い幽霊と呼んだ
白い網目状の液体が空からおりてきてカラダ中の穴という穴をふさぎこむかのように
内側へと流れこんできた
その触手は心臓を撫で
次にノド仏をトントンと弾むようにたたいた
何かがぐるぐるまわりだしてせまい道をおしひろげながら
それはこみあげてきた
ぼくの口から発せられたことば
毛穴という毛穴から小指の太さもあろうかというひも状のものが抜け出して
宇宙へと飛んでいく

世界はぼくの知らない感情で包まれた

やさしさを
ことばにするきみ
かなしみはことばにするまでもなく
あめふらし世界をぬらしてる

ぼくは愛の
ことばをうたう

たらら・り・ら




自由詩 たらら・り・ら Copyright 七尾きよし 2006-06-21 05:52:43
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