Projection
木葉 揺

アルフレッドの忙しそうな姿に目を釘付ける。
 胸のノコギリしならせて
  そっとギザギザ指でなぞりながら
疲れても金鎚で打ってしっかり釘付けておく。

アルフレッドはロイドジョージみたい
 コマコマしながら速動き
  セピアに気づいて、
私はやっと自分に瞬きを許した。

 コマコマのひとつ盗んだら
アルフレッドはつまずいたけど
 そのまま動き続けた。
  そのひとコマってすごく私に形が似ている
ので笑える。

  今度それを使ってお座敷サッカーしよう。
 でも困ったな・・・
アルフレッドのお兄ちゃんイヤがるだろうな。
 方角的に床の間ゴールだから
  ハットトリックしてもひとコマが3回、
床の間の黒さに溶け込んで

  「晩年のチャーチルか!」

って不満の声を漏らすだろう。

  だから私はひとコマを大事に外でリフテ
 ィングをした。
黒い蝶々みたい。
 ヒラヒラ、ヒラヒラ
  つられてのこぎりも
 クネクネ、クネクネ
「君たち悪あがきもそこまでにしなさい」
私は愛情込めてそう微笑んで、
 ヒラヒラとクネクネを連れて家に入った


闇にポッカリ金鎚が浮かび

一回転して地面に落ちる音が聴こえた

断腸の思いだった


自由詩 Projection Copyright 木葉 揺 2006-06-21 01:27:15
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