good-bye circle
霜天

ついに、越えていかれるのですね。


拝啓、海沿い、立ち並ぶ風車に。ごろんごろんと音をかき混ぜる大きな手に、何でもないことを、挨拶のように振舞うあなたに。ここを、越えていかれるのですね。知っていますか、すべて知っていると言っていたこの景色も、寄り添うものに服を脱ぎかけ、私、たちの知らない夕暮れになることを。


風景は揺れていますから。
ざわめきをもって迎えてくれますから。
越えていかれるあなたの足跡には未知の空白が増えていきますから。
何を追いかけるでもなく、ここにいる夢を見るのです。


涙ぐむ自転車が、雨の路肩に忘れられて。それはとても明るいのですか。グッバイ、サークル。円い円い(螺旋、の)道を歩いていくことを。背中を覚えさせてはくれませんか。雨上がりの、どうにもならない虹の空を、雨模様のサドルは風を切れますか。グッバイ、サークル。螺旋、の声を、どうにも振り返れない。思い残しの悪戯が。




ららる。
歌うように過ぎていく時間のこと。
3日を数えれば立ち止まれますので。
ついに越えていかれるのです、ね。
すべては持っていかないでください、なんて。




ここは底でしたか。風景は巡っていくのですが、青いものには何も気付けない人でしたから。気付いてはいますが、最後まで答えないことに。何事にも反復をしないまま、あなたはセンターラインを超えていくので。グッバイ、サークル。ついに、螺旋の夕暮れは見ないまま。越えて、いかれるのですね。ああ、それでも。私はここに見る夢を。存在していますから。ららる、歌うように過ぎた時間のこと。はっきりと答えてみせましょうか、指を手繰っていくように、積み残しの悪戯、が。


自由詩 good-bye circle Copyright 霜天 2006-06-19 01:02:56
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