ニュータウン
マッドビースト


 男は走り回る
 物を持ち上げ
 線をひき
 名前をつける

 男は陸の生き物だ
 りんごを離せば地面に落ちる
 風が吹く日は踏ん張らねばならない
 一日に三度腹が空く
 しかし基本的には力学と数学で説明される世界に住んでいる
 力学と数学をよく勉強し乗り物をつくる
 街を出る
 国を出る
 宇宙にもいける
 宇宙もまた力学と数学でできた世界


 女は海に住んでいる
 或いは海だったりする
 
 飽きることなく打ち寄せる
 潮の流れは度々に変わる
 しかも潮の流れはとても強い
 海の生き物たちは様々
 殻をもつもの
 喋らぬもの
 真似るもの
 泳ぐもの
 深海のもの
 どれも違う形や色や趣向をしている
 きっと母は海蛇であった
 もだえよじり生きる種だった


 陸の生き物も海から生まれたのだが
 どうやって海に戻ればよいのかが分からない
 海に戻れぬ代わりに水を飲む
 だが足りぬので度々喉が渇く
 
 たまに器用なやつがいて海の言葉をうまく話すのだが
 大抵は言葉が不自由なので
 陸の仕事で満足しようとする

 走り回り
 力学と数学を勉強し
 街を広げる
 乾いた街を広げる
 内陸へ内陸へと街が広がる
 
 そういう街の設計図には
 無意識にも水飲み場が多く描かれている 


未詩・独白 ニュータウン Copyright マッドビースト 2006-06-17 21:27:56縦
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