サバンナの雨
マッドビースト


草や葉や花の蕾が香る午後
六月の雨に空気は濃さを増している

植物の吐息が混じった空気が
血中に入り込み
くすんでしまった細胞を浄化すると

かすかに残った本能が
脳裏に囁くので
大きく息を吸い込む


手を地面につき駆けていた頃に
走り回り戦い火照った体の熱を
草原の真ん中で突っ立ち
降り注ぐ水滴で冷ましていたような気がする

しかしもう
森にはもどれない私の体を
天の雨が打つ
化学繊維でできた傘に隠れる
卑怯者として天からの雨が打つ

群れを抜けようが
番と離れ離れになろうが
死なない不埒な私を打つ

言葉を忘れた私を
許さぬと言って
天からの雨が打つ


未詩・独白 サバンナの雨 Copyright マッドビースト 2006-06-11 15:14:10
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