寓話 不可解な死 44
クリ

出張先のビジネスホテル、その非常口からこっそり抜け出した。
ドアがしまらないように工夫しておくのはもちろん、さりげない変装も完璧だ。
新幹線で1時間、家に戻りこっそり中へと入る。妻はシャワーを浴びていた。
貞淑な妻には申し訳ないが死んでもらう。愛人といっしょになるためには、この方法しかない。
敏速に行動する。妻は少々抵抗したが、外までは聞こえないはずだ。
部屋を荒らし、妻の財布と金目のものを運び出す。
ゴミ袋にそれらを入れ、人目を警戒しながらこっそりゴミ置き場へ置く。
新幹線でホテルに戻り、開けたままの非常口から部屋へと戻る。
俺の妻は強盗に殺された。俺には完璧なアリバイがある。
ほとぼりが冷めるのを待つ、それだけ。

…ドアを叩く音。警察だ。
時計を見る。いやに早い。
「署まで同行願います」
何故だ???
俺は逮捕された。

妻の次にシャワーを浴びるはずだった男が、
一部始終を目撃していたのだ。




                      Kuri , Kipple : 2006.05.25


未詩・独白 寓話 不可解な死 44 Copyright クリ 2006-05-25 03:26:35
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