「自画像」
服部 剛

誰かと笑い転げる日々を過ごす私
仮面を一枚めくれば 
誰の手も触れ得ぬ「もう一人の私」がいる 

あたりまえの幸福は 
いつも手の届く場所にあり 

浜辺へ下りる石段にぽつんと座り 
夕暮れの波打ち際
手を繋いで遠ざかる恋人の二人に
瞳を細めている

手を伸ばせば届きそうな幸福と 
潮騒に包まれて暮れゆく浜辺で一人たたずむ私との間に
いつも深い影のみぞがあり 

夜の海をみつめる私の背後で何者かが囁く 

うっすらと宙に浮かぶ額縁がくぶちの中から
寂しい微笑の男が少し口を開くとこぼれる言霊ことだま 

海風に運ばれ

潮騒の闇に消える








自由詩 「自画像」 Copyright 服部 剛 2006-05-22 01:50:31
notebook Home 戻る