伝説
きりえしふみ

疑惑が影のように付き纏い
例え太陽が不実の濡れ衣を押しつけようとも
もはや私は何も云うまい

風のように草原を渡り
波のように寄せて行く
無口な一つの現象のように
ただ行動のみで
わたしはわたしを語りたいと願う

ビンに詰められた手紙を
川べりで拾う者があるように
場所を隔てた処で 誰か
この気持ちを汲まんとする者が現れようとも
わたしはその者にとって
つれない風となろう
その者が思わぬ方向へ吹き行きて
決して 答えなど語らない
寄せる波のように 素っ気なく
別の岸辺へ引いて行こう

 金と銀の富が怒濤となって
 わたしの懐や内ポケットに押し寄せ 其処を住みかとしても
 用意された演壇が
 さあ喋れ!と脅迫して来ようとも

もはや わたしは何も語らぬ
曖昧な微笑を湛え
神話や民話のように 何説もの答えを指し示そう
わたしを識ろうとする者には

©shifumi_kirye 2006/05/14


自由詩 伝説 Copyright きりえしふみ 2006-05-15 11:21:11
notebook Home 戻る