面影橋
落合朱美


静寂の水面に一石を投ずれば
波紋がゆらり、影が波立つ
月もまた冷ややかな横顔を
一層歪めて泣き笑いする

この橋の名を面影橋と人は呼ぶ
月明かりの下で我が影を
水面に映せば見えるという
忘れ得ぬ人の懐かしい影

幼き頃に触れた母の手は
今はすっかり節くれ立って
すこし冷たくなったけれど
未だなお穏やかに我を包む

この橋の向こうに渡れば
遠い昔の我が姿

縁日、浴衣、水風船
綿菓子、提灯、万華鏡

駆け出す鼻緒の行く先は
昔も今もただ一つ





自由詩 面影橋 Copyright 落合朱美 2006-05-10 01:03:31縦
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