童心のかけら
佐野権太

帰らなくてはならなかった
ガード下の公園
オレンジと灰色の記憶
あれはいったい
どこだったか

ガムの包み紙の甘い香り
急すぎる石の滑り台
の冷たさ

風はどこからかやってきて
くるる
舞って
どこかへ

またひとり
手を引かれてゆく
背中

シーソーの
西日に溶けてゆく
ぎぃ

天井の鉄骨の
汚れた鳩
お腹が鳴ったような
ぐるる
首を傾げて

冒険はおしまい
伸びた影は
少し大きくなれた気がして
ほんとはとても小さくて
そんなことは分かっていて

砂場で見つけた四角い磁石
大切に握り締めた
手のひらだけは
熱くて
とても熱くて


自由詩 童心のかけら Copyright 佐野権太 2006-05-07 18:31:39
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