もっとも速くあれ
佐々宝砂

ヴィレブロルト・スネルは己の運命も未来も悟りはしなかった。
しかし光は己の運命を知っていた。

もっとも速くあれ

それが光の命題であり運命であり
屈折しても反射しても散乱しても構わなかったが
もっとも速くなかったものは
干渉によってかき消されることになっていた。
もっとも速くないものは
もはや光ではないからである。

光は人間よりも不自由だったので
遮断物を避けることができず
吸収されたりどこかに飛ばされたり曲げられたりしたが
命題を忘れることはなかった。

いかなる場所においても
光は光である。
もっとも速く。
もっとも速いものこそが光であり
そうでないものは光でなくなるのだ。
 



自由詩 もっとも速くあれ Copyright 佐々宝砂 2006-05-07 09:40:13
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