ダンデリオン〜蒲公英の精霊〜
落合朱美


川縁の土手に根を生やした蒲公英たちは
うららかな春の陽射しを浴びて
いっせいに背を伸ばす


夏になったら向日葵になるの


ダンデリオンが通りかかると
みんなで声をそろえて問いかける


ねえ、
あたしたちはいつ向日葵になれるの


ダンデリオンはクスリと笑って
遠くの空を指さした


君たちは向日葵にはなれないよ
だって君たちはお日さまの落とし子
やがてはあそこへ還るんだ


蒲公英たちはいちだんと背伸びをして
ダンデリオンの指さす空を見上げるが
まだあどけない花たちには
お日さまの光は眩しすぎて
誰もその姿を捉えることはできなかった

川縁の土手に咲いた蒲公英たちは
やがて白い綿毛に生まれ変わる

ダンデリオンがパチンと指を鳴らすと
南から優しい風がやって来て
蒲公英たちはふわりと風に乗って
遠い空へと昇りはじめる


お日さまへ還るんだ
   お日さまへ還るんだわ


無数の声が煌めく川面に木霊する






自由詩 ダンデリオン〜蒲公英の精霊〜 Copyright 落合朱美 2006-05-04 01:35:59縦
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