神戸のサンタ・マリア号
逢坂桜
神戸のモザイク広場には
一隻の船が飾られている
かつて世界一周を果たした船を、復元した船が
けれどその船は、航海してここまでやってきた
海を渡ってきたのだ
だが、いまは
陸に固定され、帆が張られることもなく、
綱は決して外されない
海に近い場所で
船が出ていくのを
ただ見ている
この船にとって
最初の航海は、最後の航海だったのだ
船として作られ、飾りものになるために、海を渡った
サンタ・マリア号
私の勝手な思いなど
どこ吹く風と
流してよ
きっと今日もあなたは
海を見つめているんだね
二度と渡ることはない
海を見つめているんだね
また会いに行くからさ
変わらないまま
そこにいて