眠ってしまえばいい ( 2006 )
たりぽん(大理 奔)

湿気ばかり多くて
気温が上がらない夜は虫なんかの
季節を送る歌など気にせずに
眠ってしまえばいい

閉じた瞼の裏が
奇妙な色に透けるのはまだ生きている
証だと思えるのなら
眠ってしまえばいい

   生きるということがどこかで
   必ず死、何かの死と切り離せないのに
   繋いだ手にかいたあの汗のような言葉が
   危うく関係を絶とうとする

肌の触れあう弾力や
握った手の汗ばむ不快さをつながっている
手応えだと思えるなら
眠ってしまえばいい

言葉が救えなくて
遠雷の低い振幅に思い出され不意に
胸に迫ったなら
眠ってしまえばいい

   言葉を信じられないからと
   体温を交えるわけではなく
   今に残す存在の理由を
   誰もが求める理の時間

愛するという意志が
性交や愛撫する行為で神聖なる
ラヴだと冷ややかに笑えるなら
眠ってしまえばいい

血を見なければ気づかない
生などただの信仰だと誰かを傷つけ
流れる涙にたじろぐなら
眠ってしまえばいい

   湿気ばかり多くて
   気温が上がらない夜
   虫たちの季節を送る歌
   が、

眠ってしまえ
眠ってしまえばいい
こんな夜は、歯を食いしばって
眠ってしまえば



  
2005-09-19 自由詩投稿「眠ってしまえばいい」最新版



自由詩 眠ってしまえばいい ( 2006 ) Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-05-02 01:30:20
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