仮想現実の実感
半知半能

かけら、そう、欠片だ
重なり合った煩雑な余情の群れが
核を持てずただひたすらに時間を伴って
固まっていったもの
形の定まらないその塊の欠片を抱いて
彼ら(僕らとも言えるだろう)は生まれて育ってきた

気付けば彼らの立つ場所にはいつも
切っ先のようなビル風が吹く
軋みあがる建築の谷間で
きっと、という言葉をモラトリアムの合言葉にして何かを
築いてきた、つもり

空白
空転
空漠
空行
空想
空欄
空疎
空虚
苦しみのあるなしに関わらず
腐った気持ちは空に行く運命らしい

結果から言えば
軽率な墜落と満ちたりた時間があっただけなのだが
軽蔑と敬愛のはざまで
険しい視線を泳がせることが
賢明な大人になることなのか未だに 、 わからずに



幸福とはなんだ
「こんな時代」なんて代名詞は打ち捨てるべきだ
これは至ってシンプルな問題で
呼吸困難に陥りながらも狭い空を目指して
小汚いビル風を身にはらませて飛びたてるかどうか
怖がらずに勇気を持てるかどうか
懲りずに、生き続けられるかどうか
心得なんて要らなかった筈で
答えなんてなかった筈で
言葉にするのも野暮な筈だった


自由詩 仮想現実の実感 Copyright 半知半能 2006-05-02 01:13:07
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