惜春
あおば

高村さん お元気ですか! お忙しいんですか!
しばらく書き込みがないから 案じてます
猫目石さんもエールを送っておられますよ

私たちには春4月は多忙な季節です
人類は好き勝手に忙しがってますが
動物、植物の皆さんは生存競争の只中で
”春の海〜”などとのんびりは出来ません
花だって 次から次に咲きそろい
三日見ぬ間の桜はもとより
蒲公英 菫 水仙 蓮華草
色の変化の激しさに報道カメラマンは
昼は撮影 夜は現像引き伸ばし
寝る暇とてもありません

ずいぶん前のことですが芭蕉翁の
”近江の人と惜しみけり”についての設問
どうして近江の人でなければならぬのか
どうして近江といわれても 
日本列島全図が浮かぶ程度の高校生には
観念的に記述して回答するしか道がない
今でも春の淡海の佇まいは漠として
新幹線の車窓からは窺い知れません

春には珍しく激しい風雨に帰途の道路は水浸し
東名高速は風雨の中でも混んでいて流れは速く
寿命の尽きたタイヤではABSが忙しく
私の意志は無視されて諦観の悟りを得たり

隣の車線の車 入るなよ入ってくるなってば
の祈りも虚しく突然割り込まれた
ウオータースクリーンに遮られ
ワイパーなど効きやしない
ぼんやりした色彩だけの世界が出現した
形象は男性で色彩は女性だと言ったら
君はユニークだねと評された
ああ だから今は前後左右女に囲まれて
私の意志は無くなって諦観の悟りを得たり

前の車ブレーキかけるな 絶対にかけるなよ
全身全霊をもって念を送り ポンコツ車の
アクセルをひたすら踏み続けくたびれ果てた

狭い路地の角を曲がって停車すると
隣家の八重桜の下には一面の花びらが
ぬれた路面に付着して助けを求めている
俺はどうしたらよいのかと見上げると
風雨に疲れた木の幹が俺をじっと見つめている
この花が散ると GWを迎え 初夏になるのだ





作1999/04/30



自由詩 惜春 Copyright あおば 2006-04-29 17:18:34
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