現象フェーン
吉岡孝次

湿った荷を下ろした、
身の軽さで
熱く
駆け降りてゆく。

我が名はフェーン。
現象フェーン。

気象予報士を得意がらせ
異性間に汗での交歓を齎して
海に
消えてゆく。

我が名はフェーン。
現象フェーン。

さあ 今年も家を焼くぞ。
お前たちが大切に抱え込んできたものを
少しだけ灰燼に帰してやる。

我が名はフェーン。
現象フェーン。

好かれもせず 
嫌われもせず
そのようにして一目も置かれぬまま

我が名は
フェーン。
現象フェーン。



自由詩 現象フェーン Copyright 吉岡孝次 2006-04-26 22:39:22
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