暗喩篇
アマル・シャタカ

結婚は雑巾
汚れては洗い
穢れぬようにカビないように
絞り続けて
布はほつれる

愛は悲しみであり
人として
死んでゆかねばならぬ
絶対の孤独の裏返し
孤独と傷の共有

恋は単純に
性欲だ
なんのひねりもない
男は植えようとし
女は育てようとする
総じて見ているのは
己の願望の具現化だ

愛は
相手を生かすために
自らの命を捨てる
恋は
得られぬ絶望から
自らの命を捨てる
だからこそ心中は
恋である

愛という言葉は
誕生日のケーキ
甘いクリームに
柔らかいスポンジの口当たり
与えた側は良かれと思い
もらった側は食べ過ぎる
人命尊重という名の
延命治療って
商売に同じ

言葉は虚構だ
そうでなければ
「星が降る」などと
口ずさめば
たちまち世界は美しく滅んでしまう
恐らくは
人の言葉のみが虚構であり
犬猫にいたっては
たぶん
世界のことを慮って
言葉を使わないのである
人外こそ
沈黙の聖者

鯉と恋
僕は君に鯉をしている
と書けば生臭いが
池に恋が泳いでいる
と書けば情緒を感じる
言葉が絶対であるならば
僕は君に鯉したろう
それがどういうことであるかは
想像もつかないけれど


未詩・独白 暗喩篇 Copyright アマル・シャタカ 2006-04-16 10:19:42
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