花売り
篠有里

あのひとは花を売るのをやめて
いったいどこへいったのか
わたしがそこへ訪ねていけば
ガラス張りの木枠の中
古いミシンが1台切り

道路の上の毛皮のように
カラスに喰われて
何もない、わたしの中身
どこにもいけないと思えたその時
やはり聞こえてくる、あの音

さざめくしじま・・・
ひそやかに死に絶えた道路のひび
なぞりつつ広がる私の背後に
あのひとがせまってくる

流れゆくわたしが
何故と問う、その隙に
確実にときは過ぎゆく

すべての出来事
したたりおちる結果
わたしの脳内のひみつの一つ
あのひと
あのひとはいったいどこへいったのか

わたし、そしてやはりわたし
かたことと音もしない
そこ、壊れた機械
花を売る事をやめて
わたしはいったいどこへ流れるのか


自由詩 花売り Copyright 篠有里 2006-04-11 18:32:34縦
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