滲んでいった夜について
いとう

まっすぐな帰り道が見えなくなると
穴という穴からノームが這い出て
ら、るほ、ら、ら、るほ、
ダークダークノームダーク。(あれるっちぇんど)
君たちの手に掴めるものはわずかしかない
ら、るほら、らる、ほらら、るほ、
本当にわずかしかないんだよ
驚くほど何も知らない君たちにとって

世界は(世界さえ危ういのだが)
目を閉じている場所にこそあって
君、君たち。(あれるっちぇんど)
君たちの目の前に広がるこれは
世界ではないのだよ
夜が(夜というものがあるのならば)
どれほどの暗闇で満たされていたとしても
(ら、るほ、ら、ら、るほ、)
君、君たちの夜は
さらに果てしない暗闇なのだろう
その君の、君たちのわずかな温もりが
黒く染まっていることも知らずに
(ら、るほら、らる、ほらら、るほ、)
君たちはいつも這い出て
(ほら、ら、らるほら、ら、るほ、)
こんなふうに、ほら
世界さえ危ういというのに

あれるっちぇんど
夜はアスファルトの歪みのなかで煮え立ち
もう膝まで蝕まれている
君の、君たちの夜がもう
果てしなく広がり続けるのならば
僕は僕の目を見開いて
世界ではない場所を
(ら、るほ、ら、ら、るほ、)
もう、あけわたしてしまおうか
夜は世界を知らずに
驚くほど何も知らない君たちを産み続ける
君たちが見える場所はすでに近く
ら、るほら、らる、ほらら、るほ、
まっすぐな夜が
(ほら、ら、らるほら、ら、るほ。)
世界を拒絶している

そしてもし夜というものがあるのならば
ノーム。君たちは僕に見えない
決して見えないのだよ
もし夜というものがあるのならば
ノーム。君たちはいつまでもいないのだよ



未詩・独白 滲んでいった夜について Copyright いとう 2006-04-09 09:04:21
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