子供たちのバラード デッサン
前田ふむふむ


あの西の空を埋め尽くす枯野に 
鶴の声がきこえる砂漠を描くあなたは
役目を終えた旅人のように 晴れ晴れとして穏やかです
静まりゆくあなたのその瞳をたたえる 夜のみずうみは
いま 爽やかな風のなかを舞い降りてゆくのです

まばたきを止める あなたは 星座たちの青い純粋点 
その起点をこえて さらさらとあふれる血液の遥か彼方へ
手を繋いでこえてゆく 少年の裸足たち
笑顔がこぼれる 少女の裸足たち
青いいのちが鮮やかに無垢の花を咲かせます

おお、目覚めた歌が 子供たちから生まれ始めて
星座をひとつひとつ 草花の涙のなかに染めつくすとき
もえる闇の凍りつく淀みのなかで
堕胎された天使の翼に 
あなたが 鎮魂の天の川をかければ
墜落した凛々しい窓が 厳かに浮び上がってゆくのです

こみあげてくる夜の鼓動に あなたの身篭った赤い鳥が
満たされた透明な空の時間の中心に生まれて
三日月の欠けた 雪の湿地をなめらかに瞬いてゆきます 

孤独を忘れた黒い岩の海原 
夜空がことばを立ち上げる境界線
もえだす赤い鳥 
波打つ羽根で散りばめたひかり、ひかり
あしたのつま先にむかって 
いっせいに泳ぎだす銀河のひかりたち

いっせいに喜びの声を上げる子供たち 

いま 美しくかたどる未来を 
子供たちは優しく雄々しくながめているのです


自由詩 子供たちのバラード デッサン Copyright 前田ふむふむ 2006-03-30 07:43:47
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