六地蔵
服部 剛

身に覚えのないことで
なぜか矛先ほこさきはこちらに向いて
誰かの荷物を背負う夜 

自らの影を路面に引きずりながら
へなへなと歩いていると
影に一つの石ころが浮かぶ

理不尽な誰かの足に蹴飛ばされるほどに 
じっと 口を結び 固まってゆく石ころ  

降り始めた雨の中を歩き続けていると
道の傍らに並ぶ六人のお地蔵様は
小屋の屋根の下で雨宿り 

屋根を打つ雨唄を
瞳を閉じて聞いている 

首の下にかけた赤い布をそっとめくると
石ころが胸に埋められており
六つの小さい御霊みたまは横一列に並んでいる 

暗い小屋の中で
雨唄あまうたと風のが強まるほどに
六つの石ころは赤い布をけて
おぼろな光を増してゆく 

六人のお地蔵様と向き合い
胸に手をあてていると 
からだじゅうに満ちてゆく 
石ころの光


夜道の向こうから
ライトで闇を照らす
無人のバスが近づいて来る 





自由詩 六地蔵 Copyright 服部 剛 2006-03-15 18:57:49縦
notebook Home 戻る