3月13日 手記。
かのこ

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三月の寒すぎる日。曇天。
家を飛び出た時には、雪すら降っていた。
今は、部屋の灯りは点けていないから、雲間から漏れてくる光が僅かに部屋を照らすだけ。薄暗い日。
aikoを部屋いっぱいいっぱい届くように大音量でかけるけれど、歌うことはできない。
これからは、雨の心配をちゃんとしようと思った。
てるてる坊主を作って安心するのではなく。

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知らない駅を歩くのは不安でいっぱいで、早く約束の人に会いたくなる。
地下は、方向感覚が奪われてしまうから。道順は確かに覚えても、実際に歩いてみないと分からないから。
飛び乗った電車が本当にそれで良かったのか、その人に確実に会えるまで不安は消えない。

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地下鉄は古い空調機器みたいな匂いがする。
電車が来るのを待って、これだけ人が集まっているというのにホームは静かで、余計に早く電車が来ることを願ってしまう。
こいつらみんな雇われ人なんだ。そして、私も。

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誰かに頼ることをやめてみた。
少し。練習のつもりで。

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雇われ人なんだ。みんな、社会の雇われ人なんだ。
今から自分もその社会にきちんと放り込まれる予定。
利用規約だとか、同意書だとか、そういうもの読んでも概要も詳細も分からない。
ただ日本語を読むということにしか過ぎなくて、そこに責任が生まれる。
いろいろなところに住所と氏名と年齢、電話番号、アドレスその他もろもろを書いたら、この頃どこからかメールマガジンばかり届いて、受信簿にはいつも数件溜まってるようになった。
無性に肩が凝る、この頃。

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ずっと口を結んでいたみたいだ。目が覚めた気がしないんだ。
やっぱり私は書くことしか能がないんじゃないかと思った。いや、それも月並みだ。
嘘も吐かなきゃいけないから、現実は冷や汗ばかりかく。


散文(批評随筆小説等) 3月13日 手記。 Copyright かのこ 2006-03-13 17:44:38
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