未来図
前田ふむふむ


わたしは、この震える指先のなかを流れる満たされない血液の重さを推し量っていた。わずかに眼の中に残る記憶を辿り、心房が包む夜空に対峙して、透明な糸で繋がる星を撫ぜて、痛みを発する疼きの場所を見つけても、あるいは神経細胞の繊維の中で、滲みついた有罪と冤罪を判決記録で調べても、示されるのは、夥しい数であり、それらは、硬質な青々した空にジグソーパズルのように無理なく馴染んでいた。しかし、茫漠とした荒野の中で、わたしが自ら贖うべき数は、ひとつひとつ、積み上げれば、すべて痛々しい抑鬱になって、わたしを疲弊させていることがわかる。それにたいする醜い長文の弁解は、わたしから、重さをひとつひとつ、剥がしていることが感覚できた。わたしは、瞑目すると、躰は、ほとんど重さは無く、少し浮遊していて、ふらふらとする足元がおぼつかない粗密な機械を孕んでいる。知りたかった指先は錆びた歪んだ針を束ねたものをかたち作っていた。さらに、こころは水平線のうえにある重力の磁場の十字路で茫然と喘いでいた。そこでは、肉体も、血液も削ぎ落とされて、哀れな姿をさらして、寂れた軒下に蹲る影法師のような不規則に点滅する青白い発光している透明な物体がひとつあるだけだった。その紙切れのようなものにたいして、ある時はそよかぜが、ある時は重い岩石が、波のように押し寄せた。
耐えなければならない。しかし、凝視しなければならない。
なにが、わたしを満たすというのだろう。
過去の負債を整理しても、なにも満たされないだろう。
わたしは、十字路を気付かれずに静かに通り過ぎて、
風にそよぐ未来の道程の平面図をつかんでみる
白紙の中から滲む顔は無辜の少年のように美しかった。



自由詩 未来図 Copyright 前田ふむふむ 2006-03-05 22:23:17縦
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