ぼろぞうきんの春
服部 剛

にごった泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚 
くしゃっと丸まったままてられていた 

ある時は
春の日が射す暖かい路上を 
恋人に会いにゆく青年の
軽快な足音を聞き 

ある時は 
空から星達が囁く冷えた夜に
恋に破れてうつむいたまま家路に着く青年の
とぼとぼ引きずる足音を聞き 

喜びにも悲しみにも寄り添うことなく 
路上を歩く人々の物語をうらやむ上目使いを
ゆっくりと閉じて眠るように
ぼろぞうきんの一日は暮れてゆく 

( にごったどぶがわの
( かすかなせせらぎだけは
( いつもわたしとともにあり・・・ 

汚れ身を濁った泡水にひたしたまま 
ぼろぞうきんは独り 
春を待ち続ける 

今日も誰かの足音が通り過ぎる路上の上に
広がるさおな春の空から

桜の花びらが一枚

ひらひらと風にのり 

舞い降りてくるのを 







自由詩 ぼろぞうきんの春 Copyright 服部 剛 2006-03-03 19:43:36
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