俺の恋人
佐々宝砂

俺の恋人は
俺を置いて行っちまった
どこに行ったかはわかっているけど
追いかけてゆくのは大変だ

道はわかりやすい
迷うほどの道はありゃしない
あいつが行くのは
いつも決まって同じところだ

森を抜けて早瀬を渡る
岩山の表面に開いている不自然な扉
その扉を開けると
いつもの洞窟だ

洞窟の奥の暗闇に
俺の恋人が待っている
闇の滝に濡れて
俺は洞窟を経巡る

気がつけば
俺には脚がない 手がない 指がない
俺は蛇のように泳ぎながら
洞窟のどんづまりを目指している


自由詩 俺の恋人 Copyright 佐々宝砂 2006-02-17 22:20:32
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