バスタブの肺魚
佐々宝砂

バスタブいっぱい満たされたお湯に
ここちよくぬくもって
からだをのばして
ねむってもいいんだ

鮮烈さがほしいなら
シャワーを浴びたらいい
冷たい水が
ゆるんだ頬をきっとひきしめる

誰かがさっきからそう繰り返し
繰り返し囁くのだが

湿っぽいバス・ルームで
乾いた鱗を光らせる私は
疑り深い肺魚である
世の流れが変わっても肺魚なのである

川底の泥はいつも
ぎょっとするほどに冷たいのだ
シャワーなんかが鮮烈なもんかい

そういいながら私は
とりあえずお湯に浸かっている
ぬるいので身体が腐りそうだ
しかし私はたとえ腐っても肺魚なのである



自由詩 バスタブの肺魚 Copyright 佐々宝砂 2006-02-16 18:08:32
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