ねがい
石畑由紀子

せとぎわ
おとこのわらいごえは
打破破破破、で
でも
おんなのわらいごえは
不不不不不、だった
それは
おとことおんなのかげで
苦苦苦苦苦、と
おとこのつまがわらいをこらえているのを
おんなにはきこえてしまったから


おんなはおんななのでおとこがいとおしく
おんなはおんななのでおとこのつまのきもちがよくわかる
祈っ、とふたりをにらみ
願っ、とおとこのほほをなぐって
わきみちひとつないみちをみすえたあと
おんなはあしばやにさっていった


おとことおとこのつまはいえにかえって
ふかぶかとしょくたくのいすにすわり
夢夢夢夢夢、と
おとこはないた それをみて
無無無無無、と
おとこのつまはなげいた


いちねんぶりにおなじふとんのなかで
おとことおとこのつまはねむりについた
おとこはおとこのつまのちぶさにふれることもなく
おとこのつまはおとこのさこつをなぞることもなく
ただただふかいねむりのなかへおちていった
空、空、空、と


つぎのよるも
つぎのつぎのよるも
そのつぎのつぎのつぎの
かぞえきれないくらいのつぎのよるも




やがておとことおとこのつまは
べつべつのやねのしたでねむるようになった


おんなのねがいはかなわなかったことを
おんなはしらぬまま
めじりをぬらしきょうもほほえんでいます




自由詩 ねがい Copyright 石畑由紀子 2004-01-30 21:31:18
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