無数の。
なを

ねこや青空や荒野を
ねこや青空や荒野と
なづけたひとにあなたのなまえを
なづけなおしてもらいにゆくのなら
てぶらで部屋を出て
ふいにバスをとちゅうで降りる
もう二度と帰らない旅行へ出かけることができる

(そしてそのなまえをわたしだけの秘密にする)

ときどきとりだして
それから詩を書く
わたしだけのあなたのなまえでよごれた
紙ナプキンに
詩を書いてそっとみせる
わたしは
あなたに



ここは地下鉄の3番出口を出たところ
ここから1000万光年歩いてもわたしの部屋には帰れない
不思議なことはなにもない

(いずれの場所もわたしの部屋ではなかっただけのこと)

かつてわたしのいたあの部屋
ながい旅行のはじまりの部屋をなつかしく思い出して
うつくしいみどりが
あふれる
往来にあふれる
無数のあなたを呼ぶ
だれも知らないあなたのなまえで
無数のあなたのうちでだれひとりふりかえらないあなたに
無数の
ねこであり青空であり荒野である
あなたに


自由詩 無数の。 Copyright なを 2006-02-03 15:10:46
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