集合住宅地に線を引いて
都合良く並べたドアノブを
ピッキングして歩くのは
沈黙を鍵にする私
苔まみれの地蔵を背負って
悪い芽を潰して歩く
惨めな真昼には背を向けて
未曾有の鰯、
鰯の骨、
骨の山を崩して遊ぶ子供に聞く
「君はハッピーを信じるか?私は信じない。
許すか許さないかだけで答えろ」
無視する生意気な子供の
目頭に育つ蓮華から
澄んだ地軸を引き抜いて
しゃぶる私に鍵が増える
骨の山を崩す子供に
「私と君の中に1本線を引く」と宣言し
その線をお供えする為
落ちてるストローで神社を作る
母親が駆け寄り
私を睨み鍵を取り上げる
「夢の見過ぎだ」と言われたので「私の胃が漏らすハナモゲラに柚子胡椒をかけて頭脳労働者たちにご馳走しました」
「伸びた髪を切れ」と言われたので「チューインガムにダンベルを混ぜてスクランブル交差点にばらまいて記念撮影しました」
「食前に愛人の尿も飲みました」し
「木綿豆腐にパスタ100本も刺しました」
それでも私の鍵は取り上げられる一方
骨の散らかった駐車場で
母親は私の口に腕を突っ込み
肺まで引っ繰り返して
鍵を吐かせる
「ハッピーは信じる。だけど許さない」
と子供は答えて
母親は勿論のこと
町中の人たちに愛されていた
舌に刺さる鍵を抜きながら
私は母親をピッキングする為に
骨を沈黙に吐きかけていると
子供に絵日記を書かれてしまった
すべて鍵を吐き出し終えて
鍵の山を崩す私には
重い真昼しか味方が居なかった