いろくづのなみだ
佐々宝砂

ぎちぎぎりちぎちちり
湖水が夜半に凍ってゆくよりもゆっくりと
圧縮する

大木を一冊の辞書にする工場よりも残酷に
圧縮する
ちぎちちりぎちぎぎり

なんとなまっちろい頸
この白いものはもうすぐ白くなくなるのさ

なまぬるい赤に汚れて
決して鮮やかではない
温血動物の腐りかけた赤に汚れて

鰐は哀れな獲物を食いながら
空涙を流すという

泣いたほうがお好みなら
おやすいご用さ
滝みたいにサービスしてやるよ


自由詩 いろくづのなみだ Copyright 佐々宝砂 2006-01-27 02:13:26
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