青い切符
佐々宝砂


青い壁は膨らみ私は身動きがとれない
東側の大きな窓は下向きになる
広場に立ち並び仰ぐひとびと

ぎーよんぎよんと振り子のように
揺れている世界
上下に左右に動きたわんでゆく風景
危うい綱はきしんでいるのか
それを知るすべはない

どうしてこんなことになったのか
私には知るすべがない


見知った、そうだよく知っている街を
私は走っていた
ショウウインドウに飾られた服
つまらないけど人を魅せる雑貨
雑踏とおしゃべりと営業スマイル

見慣れた角を曲がると
見知らぬ駅があった

新聞紙を着た駅員が微笑みながら
私に青い切符を手渡す
モノと書かれたその切符には
行き先表示もナンバリングも日付もない

藁屑を頭に被った駅員が
改札を通れとうながす
自動改札に切符をさしいれると
青い切符はもう切符ではなかった


昇降機は下降を続ける
私は地上にいたはずなのに
どうしてさらに落ちてゆくの?
世界はどうしてこんなに揺れるの?
みんなはどうして見上げているの?
ポジティヴ過ぎる歌声で
綱が歌っていたりして

青い壁はなおも私を圧迫する
しかし私は事態を楽しみつつある
思い出してごらん
駅員は微笑んでいたのだよ


狂気の藁が
私の足首からツと顔を出す

なんとさわやかに




2001/07/26


自由詩 青い切符 Copyright 佐々宝砂 2006-01-27 01:54:28
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