「 つるしもの。二日目。 」
PULL.
二日目。
雨が止まない。
夜が明けても、
そのまま降り続き、
今もまだ降っている。
お昼過ぎに、
カリミから連絡があった。
話したいことがあるので、
出てきて欲しいという。
お酒がまだ残っていて、
少し身体が気怠いが、
行くと返事をした。
身支度を整えて、
家を後にする。
灰色の空に傘を広げる。
傘を叩く雨音は、
密閉された響き。
雨に抱きしめられている。
そんな感じがする響き。
坂の上の喫茶店では、
カリミが待っていた。
顔を見るやいなや、
カリミは泣きだした。
差し出したハンカチを、
ぐしょぐしょにして、
カリミは話してくれた。
ここでは書けないけれど。
今まであった全部、
すべてを話してくれた。
最後はお互い、
ぐしょぐしょの顔で、
抱き合って別れた。
坂を下りる。
傘を叩く雨音は、
閉ざされた響き。
雨に抱きしめられていた。
そんな感じがした響き。
坂の途中、
子豚亭の前を通ると、
林檎の特売をやっていたので、
一袋買った。
「今日は元気ないね。」
そういって、
子豚亭のお兄さんは、
一つおまけしてくれた。
お礼をいうと、
お兄さんは照れた。
林檎みたいに、
赤くなったほっぺたは、
とても美味しそうだった。
家に着く頃には、
空は暗くなっていた。
お腹がへった。
ご飯にしよう。
今夜はアップルパイだ。
林檎の皮を剥いて、
手頃な大きさに切り揃える。
作り置きのパイ生地を、
レンジで半解凍して、
それで林檎を包む。
溶き卵を塗って、
暖めたオーブンに入れる。
焼き上がるまでの間、
向こうを見に行く。
この雨なので、
湿気っているかと思ったが、
そんなこともなく、
夕べと変わりない姿で、
吊り下がっている。
あれは明日も、
ああなのだろうか?。
アップルパイが焼き上がる。
天窓の向こうを見上げると、
雨はもう止んでいた。