微熱
七尾きよし


どちらも大きいんだけども◇右目が左目よりやさしくて◇きみは小さな女の子を連れていた

脱ぎ捨てたTシャツをデパガなだけに◇手慣れた感じにやさしくたたんでくれた君

その大きな瞳で◇ぼくの目を覗き込んでは顔をひるがえし◇フフフッってきみは笑い

ベッドの上でタロットをならべ◇別れたほうがいいんじゃないと
言うぼくを不安気に見つめた

もうおばさんよとおなかを隠しながら逃げてく君を◇押し倒すぼくの唇をきみは素早く奪い

いつの間にか左目もやさしくなっていて◇覆っていたはずの◇影も今はもうなくなってしまっていた

やわらかくて、あたたかくて◇ママの匂いがするよ◇と言うぼくのうなじを君は撫で

愛してるよって言葉を一度も言ったことのない二人は◇きっと体温を超えることのない恋を続ける◇って思ってた
さようなら◇愛しい人


自由詩 微熱 Copyright 七尾きよし 2006-01-21 11:11:15
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