裁き
七尾きよし

ことばにできる愛のことば
それは わづか
想いの中でぐるぐるぐるぐる
どこへ行ったらいいのかも分からず
回り続ける渦の数と比べれば
ことばにできる愛のことば
それはわづか

生きるために思いをことばにする
愛をささげるために想いをことばにする
いのりをささげるために願いをことばにする
それでもことばにならない心のことば 億千万
声の大きなものだけがのさばる世界
何を聞いても言葉少なに
決して秘密を明かさない闇の男たち

もう言葉はいらない
と書物を捨てて暮らした三年間
触れるだけで人はつながるのさ
深呼吸してごらんよ
ほら
そう 抱き合って片手を胸の裏側
もう片手を仙骨のあたりに当ててさ
感じるよ 君の存在を
流れてるんだよボクタチハ
呼吸するたびに宇宙に満ちみちた
七色の光の粒ツブを からだの中に吸い込んで
そして吐く すべては循環し
ボクのココロ キミのココロ 
溶け合って一つの流れとなって
カラダを波うたせながら空を昇っていく
竜のようにボクらは光になる

祭のあと
夢のあと
ベッドの上で恍惚の笑みを浮かべるボクのそば
大切なものを野獣に一つノコラズ奪いとられしまったみたいな顔をして
君はズブぬれに 泥まみれに
おびえ   泣いている
君のこころが泣いている
ボクが考えているよりも
人のこころはセンサイで ガラス製こわれもので

ことばにできるココロのことば
それはわづか

嫌よ ヤメテとこころの中で叫ぶ彼女のからだは
こわばり 固まり
運動不足な男の足を襲う肉ばなれよりも
生理的に我慢のできない奴に頭を下げるひきつった笑顔のこわばりよりも

嫌よ ヤメテとこころの中で声にならない叫び声をあげる彼女のからだは
こわばり 塊(カタマリ)
タントラセックスだマンタクチアのヒーリングタオセックスだと
神聖なるセックスを標榜するお前は
単なる一人の
飢えたレイピストに成り下がった
濡れオオカミ

ことばにできる存在のことば
それはわづか

「意見を言わない人にも意見はあるんだよ」
「キミはなぜ表現しないのだ」

ボクが君という存在の響きを
決してことばに発せられること のない
きみという存在の響き
を ことばにできるとき
二人の間に共鳴が生れるとき
ヌレオオカミのレイピストは
きっとはじめて愛を知る



自由詩 裁き Copyright 七尾きよし 2006-01-18 02:41:04縦
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