融ける帰路
A道化





見たことのある大人の
さらりとしたもうお帰りなさいの言葉が
肌の羞恥で
ぽた、
と、密かに融けた夕方5時


ええ
子供はわざと赤
のち、黒でした、その速度を把握できないまま
その質感だけを覚え込む体中
遊具の、伝播してくる陰影の一部となって
それがわたしの
全てとなって


そのあとはもう誰も
お帰りなさいとは言わない時刻ばかりが、ボーン、ボーン、と
わたし、秘密裏に帰宅する、もう誰も
お帰りなさいとは言わない時刻ばかりが、ボーン、ボーン、と
わたし、玄関先にて
引戸に引っ掛かるわたしの手のひらを
見下しながらも味わい


それでもただ
おやつという観点でだけ悲しむよう


ええ
子供はわざと赤
のち、黒でした、そののち聞こえない振りを充分終えたら
大人と呼ばれるのを待たずに聞こえる振りを始め
耳の奥の肌でだけ、密かな羞恥で、ああ、
ぽたり、
ぽたり、



2006.1.15.


自由詩 融ける帰路 Copyright A道化 2006-01-15 13:50:42
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