連音/ほうげんふだ
AB(なかほど)

  

もう自分の場所に
やすらぎがあるので
という理由で
前に進むことを停めた友へ


アガー整骨院は
久茂地交差点の近くにある
それは痛いという意味なので
痛くなったらおいで
ということで店の名前にしたのだろう
そんなに古くはないようだが
なんだかほくそえんでしまう
ちょっと痛てっ
の場合はやっぱり短くアガッ

より痛いときはアガーで
さらに痛いとアッガーッヒャー
となる

小学三年のときの先生は
本土から赴任してきた中年の女性で
細身で
いつもキリっとした姿勢で
よくは覚えていないけれど
とがった眼鏡だったような
方言を喋ると居残りで正座をさせられた
ついでに汚い言葉を使っても
居残りで正座をさせられた
帰りの会で女の子達が
逐一報告するので
僕らはよく正座をした
 「今日おそうじの時にい
  T君とS君がアガーッて言いましたあ、」
汚い言葉を使った場合は
ちょっとは反省したのかもしれないけれど
方言での場合は
誇らしげに正座したもので
第一、 居残りしているほとんどが
ふざけ合って叩き合って
アガー、アガッと言い合ったので
正座していてもみんな笑いをこらえていた
そんな僕らの明るい顔に
先生のほうが痛かったのだろうな
判らないことがあっても
気楽にしていればよかった
のに

親父が子供の頃に本土政策で使われた方言札が
民族資料館に陳列されている
それをなつかしそうに見る人達は
子供の頃それを首からぶら下げて
きっと鬼ごっこのように
友達の背中を叩き
アガーと言わせていたのだろう
鬼になってしまった子も
自慢そうに走りまわっていたのか
と思う



そこにやすらぎがあるので
という理由で
前に進むことを停めた友へ
この頃そんな君の落ち着いた顔を見ると
ちょっとだけ痛い
先生もやっぱり痛かったのかな


  


自由詩 連音/ほうげんふだ Copyright AB(なかほど) 2006-01-12 19:09:35
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
連音(れのん)