目覚め
和泉 誠

僕は夢を見ていた
それは長い長い夢だった
夢の中での出来事
僕はその全部を覚えてる

もうすぐ朝日が昇る
それは僕が望んだ事のような
それは僕が望んでいなかった事のような
夜は朝日が昇るから僕の前から去ると言った

僕の見ていた夢が終わる
長かった夢に終わりが来る
夢の中で手に入れたもの
僕はその全部を持っていく

君は僕にとって
喜びであり、安らぎであり、悲しみでもあった
君は僕を束縛し
夢の世界を自由に飛ぶ方法を教えてくれた

僕は朝日とともに目覚める
夢の世界の妖精が耳元でそっと囁く
昼の世界は最低よ
いいんだそれでも

夢の世界で手に入れた財産は
昼の世界では一銭の価値も持っていない
夢の世界では王国を開けても
昼の世界では乞食のままじゃ格好悪いよ

夢の世界で意気揚々と歌を唄っても
そうやって自分に格好悪く脅されるんだ
だから目覚めた時は貧しい乞食でもいい
いつか自分を見返せるようになりたいんだ

君が永遠と呼んだ夢の世界の美しさ
その完璧さが僕に分からない訳ないだろう?
昼の世界にあるものは不完全で刹那的だ

なのに僕は今それが欲しいんだ
確かにどこかが乾いているんだよ
きっとそれについて何も知らないから

この世界には四季がある
冬が嫌だからって秋に死んだら
もう再び夏がやって来る事はないだろう

この世界には太陽と月がある
昼が嫌だからって朝に死んだら
もう再び夜がやって来る事はないだろう

きっとまた僕は夜に
夢の世界に戻ってくる

その時は
昼の世界の財産を少しばかり持って来れるだろう
そしてまた
僕は夢の世界を自由に飛ぶ方法を思い出すだろう

だから
夢の世界の財産をたくさん持って僕は旅立つ
何もない荒れ果てた昼の世界へ


自由詩 目覚め Copyright 和泉 誠 2006-01-12 08:57:35
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