シチュー、誕生日
石川和広

かすれた声で
おめでとう
実家からもってきた赤飯は
冷たくておいしい
氷のようだ
誕生日
からだが溶けはじめる
誕生日

わたしは
生きていて
頭がざわめいて
こんにちは
わたし
あなたたち
彼岸の
常世
おめでとう
32
年は流れ
闇雲
雲に流された
月日よ
みんな元気かな

デイケア行こうか
迷っていながら
かすれていくタイヤ
今日は泳がなかった

そして笑っている
ごつごつした日を
滑空する飛行機
のように
寒い前線に乗って
神神が、
ああ
雲りぞら
夜が来る
生まれた時の
記憶
破滅する

むなしくなったり
とぼけた口調で
まじめに話したり
散乱した室内

ありがとう
ありがとう
今日はシチューだよ

はろー
はろー
どこへ行くの
わたしたち

決まっている
少しだけ滑らかな日々へ


今日はぼくが生まれた日
死の方から
まだ遠い
はりつめた
いらいらした

おめでとう


自由詩 シチュー、誕生日 Copyright 石川和広 2006-01-06 18:09:57
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