冬の物語(パール・ピンク)
千月 話子

昨日の高い 高い空から
ハッカの香りを感じた のです。
それは 甘くなく
気道から凍るような
冷たさだけ残して
昼には そっと
消えてしまったけれど



これから何度と無くやって来るだろう
首と名の付く全てを覆い隠して
火を入れる 冬の中の冬



暖色が そこから濃くなって
並び終えると
とても綺麗だ とても



鮮やかに飾りつけた指先が
本当は煩わしい
先端から5ミリ
上手に折ってゆけば
フィンガーチョコレイトを食べるように
可愛い音がするだろうか
コーティングには
パールピンクが丁度良い



傍らには 私より0.2度
体温の高い人がいて
側面から じいわりと火を点ける
秋の人より 春の人を選んでいる
無意識の 呼応



夜には 雲ひとつ無く
濃紺の冷えた空から
ツツツ と星達も呼び合うのだ
それがただの石の欠片だとしても
人は 温かい夢を見る生き物
雄星よ 雌星よ と
見上げた世界を美しく物語る



おやすみ 春の人よ
2人して手をつなぎ
清流をゆうくりと流れて行こう
時々 ときときと水中花が
背中を押し上げるので
「くすぐったい。」と君が笑った



眠れないのではなく
敏感を捨てられないだけ でした。



夏の入り口まで
クスクスと戯れる
冬と冬の間の春の陽のように
2人して




自由詩 冬の物語(パール・ピンク) Copyright 千月 話子 2006-01-02 23:52:52
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