生誕
石川和広

夕暮れ
曇っている
電車
走る
わいざつな銀河の中を
見えない草をかきわけて
走る
その中で
すれちがう
スレチガッテイク
わたし
わたしたち

生まれる手前から
死んだ後で
横だおしになっていく
コトバ
おねえさん
しゃべりつづける
ひとの形をしてるから

わたしは
うまれてこなかったらよかった

思う
絶望ではなく
暖かいものに
つつまれて
ぜいたく
そんなこといっていいのか!
うまれてこなかったらよかった


生きていて
穴を掘って
病院にむかって
傷にむかって
ぎしぎしと
むかいあえなくて
生きてきた
コトバ

うまれてこなかったらよかった
何度も叫んでいる
叫びたくないのに
ひとりで
おでかけ
次は京橋

破裂する鼓動
肥大した
からだ
からだ
からだから


陽炎は
風をかきわけて
帰り道

生まれる前へ

生きて
おみやげ
生きて
買ってくるから

走る
座る
目を閉じる
ひとりじゃないから
暴れだしているから
スマートじゃなく
ぎこちない笑顔で


うまれてこなかったらよかった

消えていくコトバ
言い直して
言い直して
消えていくコトバ


自由詩 生誕 Copyright 石川和広 2005-12-29 17:07:22
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