蒼白の天使
佐々宝砂

彼等は天使なのだから自由に降りてくる
ひとは誰も彼等の姿を見ることができない
彼等に思想はない
彼等は天使であり善でも悪でもない

天使は通り過ぎる
ありとあらゆるものを刺し貫き
ドアも壁も彼等の前では意味をなさない
天使が通り過ぎるとひとは沈黙する

灼熱する寡黙の底 沸騰する静寂の内部
天使の世界は清浄であり数式のように美しい
天使が触れるとひとは羞恥のあまりに息をとめる

天使を名づけても手なづけたことにはならない
ひとが彼等を何と呼ぼうとも天使は
ただまっすぐに貴方の身体を貫いてゆくのだ


自由詩 蒼白の天使 Copyright 佐々宝砂 2005-12-28 20:50:39
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