手紙
虹村 凌


親愛なる名誉白人の皆様へ
皇居に向かって敬礼する事が狂気だなんて
そりゃあんまりだよ
俺はただ単に天皇陛下を敬っているだけなんだ
別に街宣車に乗っている訳じゃないし
右翼的思想を持っている訳じゃないんだ
わかってくれよ
頼む

親愛なるバナナ野郎達へ
別にアメリカーナに憧れるのは構わないけれど
少しくらいは自分の国を好きになってみなよ
「祖国を好きだって言えるのが凄い」
だなんて言う方が凄いって思う
結局はジーンズよりも和服が似合うんだ
別にその髪を染めるのは止めないけど
浴衣を着る時には左前に注意してね
お願い

親愛なるラブソング詩人達へ
あなた達が偉そうに愛を語るのを止めはしないけど
それを押しつけるのは止しておくれよ
俺はもうその言葉を信じられないし
その言葉を俺自身吐けやしないだろうよ
そんな言葉は聞きたくないし聞き飽きた
もっと他の言葉で伝える事は出来無いのかい?
かまいやしねぇけどさ

親愛なる読者なんてクソ喰らえさんへ
別にお前が何を書こうと構いやしないけどさ
少しは考えて書かなきゃ駄目なんじゃない?
その内誰も居なく為っちゃうよ
だから嘘でもいいから
優しい言葉を絞り出してごらん?
まぁ俺には関係無いんだけどさ

親愛なる死にたがり屋さんへ
君たちが死にたがる理由ってのは
理想の世界と現実の世界が違ったり
ロッケンローターに憧れていたり
逃げる事すらしない
そんな小さな理由なんでしょう
別に生きる事が素晴らしいとも言わないし
何処かで誰かが待っているとも言わない
ただ単に死ぬって事は
どうしようも無く惨めで情けなくて格好悪くて
まぁ良い事なんて一つも無いって事だ
それでも死にたいんなら止めないけどさ

親愛なるK様へ
畜生
散々愛してるの何だのって
結局嘘だったじゃねぇか
もう何も信じられねぇよ
死ぬぜ
お前の所為だ
今はマンションの屋上にいるよ
ここから飛び降りるんだ
脅しじゃないぜ
もう煙草を吸う事も無いだろう
じゃあな

親愛なるR様へ
死にたくないのはわかるし
生きているのが恐いってのも頷ける
だからって文句言ってばっかじゃ事態は進展しないし
煙草吸ってばっかじゃ時間を無駄にするだけだよ
お前がとびっきりの根暗でとびっきりの純情だってのはわかった
わかったから少し落ち着いて
言いたい事とかやりたい事を考えてみろよ
幾らなんでも飛び降り自殺なんて早まるなよ
お前は言ってたよな
いつか死ぬんだったら上等なスーツをチンピラみたいに来て
煙草を片手に雨の中を野垂れ死ぬんだって

なのにどうしてだよ
テレビのニュースがお前の死を伝えている


自由詩 手紙 Copyright 虹村 凌 2005-12-27 20:01:31縦
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