若葉の行方
千月 話子

 
 降り始めた雪に濡れながら
 翔る若葉よ
 じゃれて 絡まり
 互いに触れた体の温もりを
 互いの手の平に感じただろう
 彼等は 彼等は

 何処へ行ったのだろう



 
 足先から瑞々しさがやって来て
 紅潮した頬に前髪の滴り
 横顔が愛しいと 
 笑っていた





 赤い傘の固まり
 青い傘の偏り を
 軽く避けて
 信号が点滅する速度で
 消えて行った
 いつしか霧雨に変わる
 白く霞んだ銀幕へ





 写し取った情景に声は無く
 唇を読み取る術も無い
 可視だけが ただ美しく
 四角 彩る 





 消え去っては 誰にも
 もう 弄ぶことも出来ず
 空白を埋めるまで
 閉じ込めておく
 鍵付きのオルゴヲル
 突起の音階へ




 (春よ 春よ
 雪解けて
 押し開く
 若葉の弾み
 数センチ背高になり
 数センチ心揺れる)

 箱の中で
 歌ってる





自由詩 若葉の行方 Copyright 千月 話子 2005-12-24 00:03:26
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