2.詩の商品特性
いとう

続き。詩の「商品力」向上のポイントとして、

1.質を向上させる
2.特性を理解して訴求する
3.付加価値を付ける

この3つを挙げました。で、今回は1の質の向上について書こうと思ってたんだけど、やっぱ書けません(笑)。じつは詩とCMの相似点について書くつもりでした。が、どこまで考えても個人的見解で終わってしまう。一般性・普遍性を持ち得ないので自分の中で却下と相成りました。つーかまぁ、このマーケティング論自体個人的見解に過ぎないのですが。というわけでいきなり2から。詩とCMについては、勝手にテキトーに考えていただければ(笑)。


 さて。現代詩手帖2001年12月号の対談の中で、「詩のレベル・ダウン」という言葉が出てました。別の人がこれを「シフト・ダウン」と言い換えてた。俺はこの言葉が登場する経緯を知らないのでまるっきり勘違いしてるかもしれないけど、たぶん、俺の言葉に翻訳すれば、「商品特性訴求ポイント転換のための質の変化」になるのかなと。こっちのほうが難しい表現だ(苦笑)。つーか、「レベル・ダウン」なんて、なんて高慢な言葉なんだろう。面白いねぇ(ニヤリ)。

 ま、いいや。んで、商品特性ってのは何なんでしょう? すべてのものには、さまざまな特性がありますよね。たとえば俺にだっていろんな特性がある。詩人(詩を書く)という特性もあれば、サイト運営者、仕事の面では編集者、マーケッター、あるいはリサーチャーなんて特性もある。ナンパ野郎、あるいはセクハラオヤジという特性もあったり(笑)、他にもアルコール依存症だとか別嬪さんの妻がいるとかいろいろ。もっと大まかに、男性というのだって特性のひとつ。
 じゃぁ、「いとう」という商品を売り出すにあたってどの特性をどんなふうにどのくらいの割合、どういうタイミングで訴求していけばいいのか、市場が「いとう」に求めるものは何なのか、その場合の市場とはどのようなものなのか。
 たとえばインターネットという市場ではどれを重点的に訴求すればいいのか、リーディングにおいてはどうなのか、詩誌の人たちと会話するときには、あるいは友人と遊ぶとき、仕事をするとき、何が求められているのか、そしてどの特性を提示したいのか、そのあたりの兼ね合い、あるいはバランスが重要になってくる。つまり、それぞれの「市場」で「いとうの商品力を高める」ってのは、「いとう」の特性を磨くことだけじゃなく、「いとう」の何をどう見せるのかってことも大切なわけです。「特性を理解して訴求する」ってのは、そういうことです。
 で、商品特性の訴求方法として、大きく2つに分類することができます。主体重視か客体重視か。主体重視ってのは、訴求したい特性に目を向けさせる方法。客体重視ってのは、目を向けてもらうために特性を選んで提示する方法。ちなみに後者は「媚を売る」とかってのとは別次元の話ね。

 詩の市場を盛り上げる、つまり、詩(poetry)に目を向けてもらうためにどうすればいいのか。個々の詩の質を高める以外に、詩の商品力を上げるのにはどうすればいいのか。そういったことを考える場合、主体重視によるアプローチってのは、現在、明らかに失敗していると思う。「質」が大切なあまり、「質」を訴求することのみに傾倒して、あるいは質を求めるあまり訴求することすらないがしろになって、その結果、世界(と言うのは大袈裟だけど)と分離してしまった感が強いです。あー、もちろん、それを良しとする人もいますが、良し悪しとは関係なく、現象として起きているのは確か。んで、失敗はしてるけど、間違ってはいないと思うんですよね。質の訴求ってのは不可欠だし、それがなければそれこそ、詩なんてただの心情吐露大会になっちゃうから。質のみを訴求することと、質の訴求を認めないことは、結局、同じ場所でものを喋っているに過ぎないんだと俺自身は思っています。で、んと、ある種の層に対する訴求方法として、主体重視によるアプローチは効果的なんだと思います。使い方を間違えなければ。

 次。詩の商品特性を客観重視で訴求する場合、まず、詩に何が求められているのかを考え直す必要が出てきます。あるいは、詩のどんな特性を訴求すれば、詩に対する偏見、無知、視野狭窄を払拭できるのか。詩の質自体は、本当に求められているんだろうか? 前回も少し書いたけど、市場がまず詩に求めるのものは、はたして「質」なのかどうか、みつをや326を見るまでもなく、疑問に感じています。
 俺としてはやはり、コミュニケーション特性は無視できないと思っている。詩の入口として訴求するには効果的な特性だと考えてる。ただもちろん、これを全面的に押し出せばワヤクチャになるのは当然なので、コミュニケーション特性の訴求のみでは何がしかの問題点を抱えることになるのも確かです。で、その問題点を解決する手段として、そこから次のポイントへ移行するシステム、詩の他の特性に目を向けてもらう(向けさせるではなく)方法論を構築する必要があるんだと思う。やり方は人それぞれでしょう。作品として提示する人もいれば、サイトとして、あるいはワークショップ等で場を提供する人もいるだろうし、また、それらのインフラを整備することで間接的に寄与する人も必要だろうし。
 あとはまぁ、もちろん、コミュニケーション特性以外の訴求ポイントもいっぱいあるんじゃないかなと。その点に関しては、ちと思考が飛ぶけど、(詩の)流通経路の多様化にかかってると考えてます。何故多様化が関係してくるのかは、勝手に考えてくれ(笑)。俺自身は、現在の詩の流通経路を細かく分類すると6種類あると思ってるけど、まだまだ足りないんじゃないかなと。


 ん。そんなところか。上手くまとめられなかったような気もしますが、ま、このへんで。次回は付加価値について。




散文(批評随筆小説等) 2.詩の商品特性 Copyright いとう 2005-12-19 14:03:44
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